旧国道で、ひときわ緑の濃いエリアのひとつが花園児童遊園のあたり。公園の並びに、2021年5月に「カレーハウス エール」がデビューしました。
周りの緑と調和した鮮やかな空色の扉が目印。開けると暖かみのあるウッディな店内にジャズが流れていて、落ち着ける空間だと一瞬にしてわかります。
カレーハウスというだけに、数種のカレーがスタンバイしていますが、ビーフカレーの解説に「赤字覚悟」と書かれているように価格はほとんど1000円以内。それでいて「ホテルタイプ」の満足が味わえるのです。というのも、オーナーの松尾秀幸さんは、元ホテルマン。ホテルの顔といえるフロント業務を長年こなしていたなかで、いつかホテル級のカレーを提供する店をやってみたいという夢がありました。そこで、コロナの影響でホテルの閉館が決まり、提携ホテルへの異動の話が出た際に、夢を叶えるならこのタイミング!と脱サラしたのです。趣味が料理で、和洋中華、と、なんでも器用に作る秀幸さんですが、理想のホテルカレーの再現は、かなり難しく、試行錯誤の繰り返し。そこで頼りになったのが、ホテル時代の仲間や家族。友人シェフの監修があり、家族や友達の手厳しい試食とアドバイスがあり、今のメニューが完成しました。秀幸さんの好きなクミンを筆頭にスパイスは10種ほどに厳選。個性的になりすぎず、素材の旨味を最大限に引き出して‥‥。デミグラスソースが色濃い洋食屋タイプでもなく、スパイスカレーのように香辛料が攻めてくるタイプでもなく。スパイスがふわっと鼻に抜けるように広がり、最初は優しい辛さが心地よく、食べ進めるとしっかり辛さが増してきます。とはいえ血流の活性化で顔色がよくなことはあっても、汗だくになることはなく、落ち着いて味わえる。なるほどホテルスタイルです。看板のビーフカレーは、しっかり煮込んでほろほろに溶け込んだ牛肉の甘みでスパイスが引き立ち、バランス抜群。トッピングの贅沢さに思わず唸ってしまうのが、エビフライやロースカツカレー。カツは衣がサクサクで、カツ単体で食べたくなるクオリティ!しかもルーに絡めると、より肉の旨味が増します。エビはお皿からはみ出るほどのサイズ感が魅力です。特筆すべきが、お米。兵庫県のJAと直接やりとりし、精米したてで届くキヌヒカリは、ふっくらしてて香りよく、冷めても美味しいという優れものです。
不思議なのが、カレーのお店なのに昼前から夜まで通しで営業していること。実は吟味して仕入れているケーキ350円〜が密かに人気。オーダーが通る度、秀幸さんがドリップするコーヒーとセット550円〜で過ごす方も多いのだそう。「カフェみたいですね」と言うと「本当はカレーカフェで登録したかったんです。なので、お茶やケーキだけでも大歓迎」だそう。ちなみに、居心地のいい空間は、秀幸さんと奥様の淑子さん、そしてふたりの息子さんと娘さんのお婿さんがDIYして完成させたもの。そして普段は秀幸さんひとりで切り盛りしていますが、時々、奥様や息子さんがホールを手伝います。一方的なものでなく、お互い応援しあうという意味の「エール」を店名にしたといいますが、なるほど、家族からのエールに美味しいカレー作りでしっかり応えています。そしてお客様とのエール交換が、今後どんどん広がっていくこと、間違いなしですね。