看板や店舗の壁に掲げられたロゴは、日の出をバックに舟が漕ぎ出していく風景。「前をむいて進もう」という温かく力強いオーナー林尚志さんの想いが込められています。
2021年6月に誕生した珈琲専門店の「ACCEPT COFFEE ROASTER(S)」は焙煎所を兼ね備えた就労継続支援B型事業所。林さんは現在、この事業所の他に、ハンディキャップをもつ児童のための放課後デイサービスを運営しています。以前は人材派遣の会社や医療機器メーカーといった、福祉とは無関係の仕事についていましたが、お子さんが心臓に疾患をもって生まれてきたことをきっかけに、世の中の障害をもつ子供たちやその両親のために何かしたい、という熱い想いから今に至ります。
人材を扱う仕事をしていただけに、人の繋がりを活かす林さん。先駆者たちのアドバイスを受けて、様々な療育プログラムに取り組んできました。放課後デイサービスをはじめて10年近くたち、巣立って行く子たちの将来を意識し始め、この就労施設を立ち上げたのです。「障害の有無を問わず、かっこいいところで働きたい、と思うのは一緒。魅力ある就労継続支援の事業所を作ることはできないだろうか?」と、関わるすべての人が笑顔になれる事業所を目指していたところ「コツコツ真面目に作業できる人は、スペシャルティコーヒーの仕事に向いてるはず」と、アドバイスをくれたのが、高校時代の同級生。今やバリスタとしてだけでなく、珈琲の焙煎の伝道師としても注目を浴びる、「TAOCA COFFEE」のオーナー田岡英之さんでした。
ところでスペシャルティコーヒーとはどんなコーヒーでしょう?安く大量に流通させることが優先されがちな一般的なコーヒー豆と異なり、栽培や収穫などの品質管理が正しくできていることと、風味を損なう原因である欠点豆(欠けたり割れたりしている豆)の混入が極めて少ないことが大きな条件だそう。「ACCEPT COFFEE ROASTER(S)」は、ハンドピックによる欠点豆の除去にはじまり、豆の計量、梱包など、細やかな作業を個々のスキルを伸ばしながらおこなっていく、就労継続支援事業所なのです。「まずは働きたいと思える場所でイキイキ働いてほしい。ゆくゆくはバリスタや焙煎士となる子も育つと思っています」と林さん。店内を見渡すと、奥には一見、カフェスペースのようですが、そこは仕事場です。豆を選別したり、パッケージに丁寧にロゴマークのシールを貼っている姿がありました。支援員にはバリスタの資格保持者もおり、いますし、焙煎機はドイツのプロバットを採用している本格店。質の高いスペシャルティコーヒーが5種類用意されていて、店先で試飲しながら購入できます。淹れたての一杯もテイクアウト可能なので、散策のお供にどうぞ。