2019年オープンですが「旧国道の青いテントのパン屋さん」としてすっかり定着した『ベーカリー ウエダ』。
この界隈で熱望されていたハード系パンがたくさん並び、近隣では、食事の際にご飯ではなくパンが食卓にあがる頻度が増えたと聞きます。
オーナー・上田哲志さんは口数少なげなザ・職人という雰囲気の方ですが、お客様が店を後にする際にはよほど手が離せない時でない限り、厨房から必ず「ありがとうございました」と。そしてヒマさえあれば、厨房を隅々までお掃除している几帳面さん。そんな方が作るからこそ、パンはどれも毎日、確実に美しく、おいしく仕上がっています。
「私は彼の作るマスタードフランクが一番だと思うんですよ」とレジを担当する奥様の恵子さん。小さい頃からパン屋さんになりたいという夢があった哲志さん、阪神間でパンを語るに欠かせないドンクで製造を学びました。なるほど、こんがり焼き色の魅力的なおいしいハード系のパン達が名店での修業の賜物だと知り、納得です。一方、入口では布製のアンティーク人形で出迎え、店内あちらこちらにアメリカンテイストの雑貨をセンスよく飾り…。あたたかい雰囲気作りをしているのは、恵子さん。彼女が描くイラストや文字も味があり、手描きのネームプレートが並んだパンと相性がよく、より美味しそうに見せてくれます。そう、このお店のポップで、バゲットとフランスパンの違いを簡単に理解できます。バゲットは仏語で「棒」という意味。しっとりした中身より、パリパリした外=皮が好きな人におすすめ。バゲットは「中間」という意味で、中身の多いフランスパン。このお店にはプティバゲットもあり、食べきりサイズを購入することができるのもありがたい。
店内に常連さんのお子さんからの手紙が貼られていました。「フランスパンがおいしい!」という感激が、元気いっぱいの文字からあふれています。他にもここのバゲットを使っているレストランで、知らずに提供されたお子さんが「いつものやつ」と言って驚かせたというエピソードも。子どもがフランスパン?と思う人もいると思いますが、フランスでは硬いパンを赤ちゃんにかじらせる文化があります。歯がため効果があり、噛む力を鍛えるのに最適だそう。
最近では、パンのアイテムもどんどん増えて、40ほどに!甘いケーキ系も並び、定番のラスク同様に人気を集め、お茶菓子調達のリピーターも増えました。恵子さんが唯一手伝うというアップルパイは、林檎の甘煮を彼女が担当。ふたりの合作は、いい色ツヤ、香りを放ち、ほどよく甘酸っぱく、このお店の存在そのもののよう。手間がかかるので、登場回数は限られているようなので幸運にも遭遇したら、お試しあれ。