その名からもズバリ、餃子がおいしいことで知られる『餃子の王将』。全国展開のチェーン店なので、どこでも同じ味、同じメニューと思っていたのですが、それは大間違い!ここ鳴尾店はひと味もふた味も、違います。
というのも店長の島田正和さんは、12年前にこの店に引き抜かれる前、有名ホテルの中華シェフとして腕をふるっていたというのです。
実はここ『餃子の王将鳴尾店』のオーナーは肉の卸しの仕事をベースに近隣で焼肉屋やラーメン店など、手広く経営し、それらのお店が軒並み人気店という商才の持ち主。そこで、この店を12年前に改装するにあたり、本格的中華料理店を目指すことに決め、島田さんに声がかかったのだそう。
とはいえ、やはり全国区の『王将』ですから、レギュラーメニューのレシピは共通。タレから調味料、味付けまで同じです。特に餃子に関してはセンターから中身のあんと皮が送られて来て、それを包むので、どこの店も同じクオリティだといいます。
となると、注目すべきはオリジナルメニュー。冊子タイプとは別に、一枚もののメニュー表をご覧あれ。「オリジナルメニューはタレやスープの素はすべて自家製を使用しているんです。
僕の作ったのを、厨房に置いてます。そしてその自家製タレを使い、五目あんかけ焼きそば、ホンコン焼きそば、海老のマヨネーズ和え…ホテル時代にやっていた料理をアレンジして出してます。
例えばホテルでコースの〆に出していたネギと叉焼だけのシンプルなホンコン焼きそばに、王将らしくニラともやしを加えてアレンジしたり。そうそう、通常、王将のチャーハンの種類はレギュラーかキムチぐらいですが、うちはオーナーから和牛肉の半端な部位やすじ肉をいただけるので、肉を使ったオリジナルが自慢。
柔らかく炊いたすじ肉入りのカレーチャーハン、和牛肉の細切れをガーリックで炒めたガーリックチャーハン。どちらも人気ありますね」と、さらり、スゴ技を説明してくれる島田さん。
一番気合いの入った料理を尋ねると『五目あんかけ焼きそば』との答え。とにかく麺の仕込みが大変らしく…一回蒸してからボイルして、その後パリッとなるまで焼き上げて。
そこに具だくさんのあんをかけたら、完成だそう。いただいてみると濃厚そうに見えて味わい優しく、素材それぞれの味が活かされていて、パリッパリとトロットロの食感のコンビネーションが最高でした。
「ホテルと具や麺の種類は違えど、レシピは同じで、価格は3分の1くらいですかね?」と、楽しそうに笑う島田さん。別タイプのお値打ちメニューが『びっくり揚げそば』だそう。というのも、両手で抱えられないほど大きなお皿に三、四人前の麺が盛られ、注文した人にのみならず、店内全員をびっくりさせる大皿料理です。
「部活帰りの高校生グループなどは、ぺろりと平らげますが、家族連れなどは完食が難しいかも…。でもご安心を。持ち帰り容器を用意していますよ」とのこと。
今後も他の王将にはないベーシックなオリジナル中華メニューを月替わりで提案していきたいと意欲的な島田さんですが、その理由が「厨房で働く若手三人が、みんなやる気がある子ばかりなので、僕のもってる中華の技を出来る限り伝えたい」から、と。
兄貴のように慕われ、尊敬されている店長とスタッフとの間柄も微笑ましく、これまた一段と料理の味わいが深くなりました。