▲ココチ鳴尾店さんの新型コロナウイルス感染防止対策について【動画】
「但馬屋」さんの隣、街角にできた八百屋。手描きの黒板や看板、店先に並ぶ季節の果物が、道行く人の目を楽しませています。一般的な八百屋と違い、買うものを決めて行くとその品がなく、フラれることも。野菜との出会いを楽しみながら、献立を決めていくのがこのお店では正解です。そして初めて見る野菜、旬の果物の前で足を止め、スタッフから野菜の産地や農家の方のエピソードなどを聞きながら、時間をたっぷりかけて買い物するのが楽しいのです。そう、道の駅の直売所に立ち寄る感覚に似ています。
迎えてくれたのは、よく日焼けした本田明典さん。実は「ココチ」は会社組織の八百屋で、神戸の湊川と甲南に姉妹店があります。会社代表の本田さん、奈良の五條にある実家は代々続く農家。お父さんの代から兼業農家になり、本田さん自身、3年前まで医療福祉の仕事をしていましたが「農地があまりに広いので、そろそろ父親を手伝おうかと。どうせなら生産から出荷、加工も自分達でやって、より新鮮なものをより早く消費者に届けられる入口から出口までの形態を作りたいと思い、会社を立ち上げました」とのこと。声をかけ、集まった農家は約45軒で、大半が家族のために趣味の範囲で作っているご年配の方。そんな大先輩とうまくやりとりできるのは、福祉の仕事でその世代と交流してきたからでしょう。農業をやめたとたん、痴呆が始まる人を多く見て、なんとかしたかったという想いも少しは会社設立で解消できたといいます。ただご隠居さんは、好きなものだけを作るというスタンスの人が多く、会社の希望がなかなか通らず。そのため定番野菜ですら必ずあるわけでない…というのが悩みでしたが、それが今やこの店の個性。野菜との一期一会を楽しく思う常連さんがどんどん増えてきているといいます。
人気上昇の裏には、熱心なスタッフたちの支えがあります。スタッフは、近所に住む子育てママ。家族に野菜をおいしくしっかり食べてほしい、と日々台所に立つお客さんと同じ目線ゆえ、会話もセールストークでなく、丁寧で正直なのが、好評なのです。例えば「このミカン、形は悪いけれど甘いですよ」と実際に食べた感想を伝えたり、新しい野菜がきたら宿題みたいに、調べて、食べて、レシピを紹介。なんと野菜ソムリエをとったスタッフもいます。味のある手描きポップやプライスカードもスタッフ作。実はここのスタッフは、芸達者が多いのです。鍋掴み、エプロン、小物類…レジ隣の棚に所狭しと並ぶ作品は、スタッフの数名が中心となって立ち上げたブランド「LUTUS ROOTロータスルート」の商品。お客さんに、生活が楽しくなるステキな手作り作品を提案しています。ちなみに「ロータスルートブランド」のエコバッグを購入し、持参すると、毎回1000円以上のお買い上げで、50円お安くしてくれます。「そんなアイデアもすべて、スタッフさん任せ。いい雰囲気にしてくれているので、安心して農業にとりくめます」と本田さん。スタッフとの信頼関係が、お店の魅力につながっているのだなぁと思いました。
何があるのか、ワクワクしながら覗きたくなる八百屋さん。食卓に野菜の出番が増えること、間違いなし、です。