▲リトル書房さんの新型コロナウイルス感染防止対策について【動画】
本が大好きで、時間があれば本屋さんに通っていた幼少時代。学生の頃は司馬遼太郎さんの歴史小説や、ムツゴロウさんのエッセイを読みあさっていたという後中淳司さん。宝塚出身で、就職を機に神戸に住み、阪神淡路大震災で西宮へと移り住んで丸20年。今ではすっかり西宮が第二の故郷となり、大手の文具メーカーを脱サラし、いざ、何か地元で喜ばれることをしたいと考えたところ、老若男女が集える本屋『リトル書房』の誕生となったのだそう。
「憧れの職業でした。小さい頃に通っていた町の本屋さんでは、おじさんが台の上で一日中、のんびり好きな本を読んでいて、うらやましくて」と目を細める後中さん。でも実際、朝は配達されてきた本を並べる作業で大忙し。昼から注文したり、返本したり。ゆっくりとお昼をとる時間もないそうで「想像していたのとは違いますが、好きな本に囲まれているから、忙しいのが楽しいです」と。
間口が狭く、奥に続く店内。入って右手には絵本など子供向けの本が並び、その横にはママが好きそうな雑誌や本がスタンバイ。親子が隣り合って本を選べるように配慮されています。しかも大半の本は中を見ることができ、椅子まであります。つまり立ち読みも座り読みもオッケー。「昔、僕も漫画など立ち読みしていたので、中を見て、納得してから買いたい気持ち、わかるんです」と、お客さんの感覚を大事にしているのが、居心地の良さに直結しています。
店名から子供の本屋と勘違いする人も。確かに児童書の欄が広く豊かであるのは事実。月に2度ほど、絵本の読み聞かせのイベントもやっています。でも限りある店内に、所狭しと多彩な分野の本が並んでいます。それゆえ散歩の途中に立ち寄るバギーを押した夫婦、新聞の新書欄を切り抜いて持ち込み、取り寄せを頼むミセス、話題の小説、雑誌を買い求めるビジネスマン…やってくる人も多彩。そんなお客さんの要望や傾向を見ながら、取り扱う本を少しずつ変えていき、後中さんの理想とする幅広い世代が憩える場所となりつつあるのです。「大手の本屋に比べ、コンパクトなのでウロウロせずにすんで、楽ちん」「実際、手にせずネットで購入するのは心配なので、助かる」「探していた絵本に出合えてびっくり!」といった声が集まるのは、小粒ながら存在感のあるお店ならでは、です。
棚に置かれた、みやたんの作家たかいよしかずさんの直筆サインを発見。日付は2016年9月16日、開業日。「地元密着型の本屋の開店記念に、と、知り合いが紹介してくれたんです」と嬉しそうに微笑み「地域を盛り上げることにも力をいれたいので、西宮にゆかりのある作家さんの作品を紹介したり、サイン会を開いたり。地域で活躍する女性作家の手作りアクセサリーや小物を紹介するコーナーを設けたり。これからもいろいろ仕掛けていきたい」と語る後中さん。今後の変化にも期待したいものです。